【感想】母親って何なんでしょうね…

「辰彦は普通に暮らしていると思っていた。仕事と家庭。そのふたつが辰彦の日常生活の柱で、もちろんそこから生じるさまざまな細事があるだろうが、決して日常からはみ出ることはないだろうとあたりまえに思っていた。  辰彦が不倫をしていたと刑事が言ったとき、なにかのまちがいだととっさに否定をしたが、正直なところあり得ないことではないと思っている。不倫、つまり浮気なんて珍しくもない。夫だって若い頃には何度か女のにおいをさせて帰ってきたものだ。それを騒ぎ立てるかどうかで、日常内に収まるか、それとも日常を壊してしまうのかが決まってくる。つまり、最終的には妻が決めることなのだ。」

まさきとしか. あの日、君は何をした (小学館文庫) (p.266). 株式会社小学館. Kindle 版. 

感想メモ
普通は人を追い詰めることもあるのだと知った。
こういうお姑さんがいると嫁にしてはたまったもんじゃない。

不倫ぐらい我慢しろ、と言ってるようなものだ。

妻は家にいるべき、という価値観はこの世代には苔のようにこびりついている。

 

一体冒頭から何引用しちゃってるの?何言っちゃってるのと思ったアナタ。

正解!!(笑)

 

ご紹介するのは、

 

まさきとしか著「あの日、君は何をした」

 

これも、気になってました。

そしたら何とkindleで読める事が分かり、ダウンロードからの半分一気読み。

まさきさんの筆力と圧倒的展開の凄さに引き込まれました。

そして、怖い…。

 

以下、あらすじを。

『完璧な母親』著者が放つ慟哭のミステリー。

北関東の前林市で平凡な主婦として幸せに暮らしていた水野いづみの生活は、息子の大樹が連続殺人事件の容疑者に間違われて事故死したことによって、一変する。深夜に家を抜け出し、自転車に乗っていた大樹は、何をしようとしていたのか――。
15年後、新宿区で若い女性が殺害され、重要参考人である不倫相手の百井辰彦が行方不明に。無関心に見える妻の野々子に苛立ちながら、母親の智恵は、必死で辰彦を探し出そうとする。
刑事の三ッ矢と田所が捜査を進めるうちに、無関係に見える二つの事件をつなぐ鍵が明らかになる。
『完璧な母親』で最注目の著者が放つ、慟哭のミステリー。

Google Booksより引用

 

このお話に出てくるのは、二つの家族。

そして事件を捜査する刑事たち。

 

興味深いのは、刑事たちもそれぞれに何かしらの過去や葛藤を抱えていて、

それらと向き合いながら事件を紐解いていく姿が何とも人間臭い。

 

「誰 も 自分 の こと を 気 に とめ ない し、 視線 を 向ける こと も ない。 周囲 の 無関心 さに、 これ が 自由 なのか、 と 解放 感 を 覚え た。 しかし、 いつか ら か 透明 人間 に なっ た 自分 に 頼り なさと 不確か さを 感じる よう に なっ た。   これ で いい の だろ う か。 ふと、 へそ の あたり から そんな 疑問 が 浮かん で くる こと が 増え た。『 これ』 が なに を さし て いる のか わから ない 漠然 と し た 不安。 もしか し たら すべて の こと に対して、 これ で いい の だろ う かと 思っ て いる の かも しれ ない。」

まさきとしか. あの日、君は何をした (小学館文庫) (p.121). 株式会社小学館. Kindle 版. 

 

もう一つのテーマとして掲げられているのは「完璧なまでの母の愛」

 

子育て真っただ中の私にとって、息子の死というのは想像するだけで

胸が張り裂けそうだ。

 

「次に あなた たち が 生まれ変わっ たら、 また 同じ こと を 繰り返す の です よ。 そんな 悲しい 輪廻 に し て いい の です か?」   同じ こと を 繰り返す ─ ─。   何度 生まれ変わっ ても、 私 の せい で この 子 が 死ぬ という のか。 私 が この 子 を 殺す という のか。」

まさきとしか. あの日、君は何をした (小学館文庫) (p.266). 株式会社小学館. Kindle 版. 

 

詳しいことはネタバレしてしまいそうなので明かせないけれど、母親の強い愛情は、相手によっては刃となる。

そしてその刃は、再び悲劇となる。

息子の死というのはそれだけ、母親にとってもは辛くてたまらないことなのだ。

このセリフはそれを雄弁に物語っているといっても過言ではないだろう。

はぁ~、こうして思い出しながら書くだけでも辛いわ~

 

子育て中の人にとってはたまらない内容だと思う。

だから、無理して薦めることはできない。

また、このお話には輪廻転生にまつわる話が出てくるので、いわゆる「見えざる世界」みたいな思想を苦手とする人はご注意を。

私も読んでて少し、胸糞悪かったことを付け加えておく。

 

ラストは、マジで鳥肌。

「えっ…」て何度も思った。

そして該当のページに戻った。ほんとせわしない。

これはね、悲しすぎるよ。

完璧な母親を知っているからね、なおさら…。

 

それと。

冒頭にご紹介したセリフも、母として、また妻としてこうあらねばならないという

思いが溢れに溢れまくっている。

自分がそう思うのは結構なんだけど、皆が皆同じことを思っているわけではない。

それは人に押し付けるなよ!と何べん思ったことか。

 

精神的に参っているときに読まなくて、本当良かったです…。

 

kindleがまさかこれとは…。

併読していた阿佐ヶ谷姉妹のエッセイに救われました(笑)

それはまた今度、書けるかな。乞うご期待。